商標登録が無事完了したら手続きはひと段落ですが、ブランド育成や保護の観点からは、商標登録完了はむしろスタート地点です。
せっかく取得した商標権の価値やブランド力を高めていくためには、商標登録完了後に気をつけるべきことがいくつかあります。
1. 登録商標の使用機会を増やす
登録した商標を使う場面・場所・頻度を積極的に増やしましょう。
商標の根本的な役割は、あなたの会社(事業)・商品・サービスなどを他の事業者のものと明確に区別し、消費者の頭の中に記憶させることです。
人の名前と顔をしっかりと覚えるには何度もその人に会うことが必要なのと同じように、商標も消費者をはじめとしたステークホルダーとの十分な接触機会(=商標の使用機会)を増やすことが大切です。
また、単に「知られる」だけでなく、「ふさわしいイメージと結びついて知られる」ことが、売上を上げる力のあるブランドを築くためのカギになります。
そのためには、あなたの事業や商品・サービスに対して好印象を抱くシーンで商標を見せる機会を増やすことがポイントです。
商標が無事に登録されたら、いちど商標をいつ・どこで・どのくらい使っている(使う予定)かを再確認し、信用がその登録商標に効率良く蓄積されるよう、商標の使用機会を意図的に設計しましょう。
2. 権利範囲の拡大が必要になっていないか定期的に確認する
商標登録の手続きをしたときに、どの区分や指定商品・サービスで登録すれば足りるか検討したかと思います。
しかし、商標登録後にも、権利範囲の拡大が必要になっていないかを定期的に確認することが大切です。
なぜなら、登録した商標に関係する事業が時が変わるとともに変化していく場合、登録商標の権利範囲(指定商品・サービスの内容)もそれに合わせたものにしなければ、その事業を商標権で十分に守ることができなくなってしまうからです。
登録商標の指定商品・サービスを増やしたい場合には、新たに商標登録出願をすることが必要です。
いちど商標登録が完了した後であっても、定期的に「権利範囲の見直し」を忘れないよう、スケジュールに入れておくのが良いでしょう。
3. 商標のバリエーション追加に対応する
定期的に見直しが必要なのは、指定商品・サービスの内容だけではありません。登録商標にマイナーチェンジが加えられたり、バリエーションが追加されているときにも、追加で商標登録をしなければならない場合があります。
追加の商標登録を検討すべき典型的なシーンを挙げてみましょう。
- ひとまず普通の文字でネーミングを商標登録したが、ロゴマークが完成した。
- リブランディングに伴い、ロゴマークのデザインが新しくなった。
- サービス名が認知されるに従い、略称でも呼ばれるようになってきた。
このように、たとえ事業の範囲(指定商品・サービスの範囲)に変更はなかったとしても、商標の別パターンが出てきたときには、それらを十分に守るために商標登録の見直しをすることが大切です。
4. 他者による侵害行為がないかウォッチングする
ブランド力を高めるためには、権利内容の最適化とともに、あなたの大切なブランドや信用を棄損するおそれのある他者の行為を適切にブロックすることが重要です。
商標登録が完了すると商標権が発生します。この商標権により、登録内容に似た範囲で他者が商標を使用する行為を差し止めることができるようになります。
もっとも、他者の行為があなたのブランドに悪影響を与える前にブロックするためには、侵害行為の早期発見がポイントになります。
そのため、他者による商標権侵害行為がないか、市場をウォッチングする習慣をつけましょう。専任の担当者や部署がない場合でも、Googleアラートのようなサービスを活用すれば、小さい労力で最低限のケアをすることができます。
5. Rマークをつけて登録商標であることを積極的にアピールする
商標登録が完了すると、その登録商標に「®︎」マークを付けて使用することができます。
「®︎」マークは、自らが商標権を持つ登録商標であることを示すマークであり、独自のブランド名であることを効果的にアピールすることができます。「®︎」マークが付いていると、それを見た人は特別な注意を向けるので、人々の記憶に残りやすくなる効果も期待できます。
「®︎」マークを登録していない商標に付けることは法律で禁止されているため、「®︎」マークの活用は商標登録した人の特権です。
ぜひ積極的に有効活用しましょう。